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IFLA LSN中間会議と国際セミナー in バンコク(2024年3月18日~21日)

2024-05-10 14:58:07  会議・講習等報告 国際

報告:野村美佐子

はじめに

 タイのバンコクでIFLA/LSN(特別なニーズのある人々のための図書館サービス)セクションの中間会議と国際会議が2024年3月18日から21日にかけて開催されました。バンコクにあるゲーテインスティテュートがローカルホストを務めました。
 LSNセクションの中間会議は、18日にハイブリッドで行われ、多くのメンバーがZOOMでの参加となりました。実際に対面で参加したのは、インドネシア、フィリピ―ン、オーストラリア、ドイツ、そして日本からとなりました。ここでLSNとしての2024年度の活動計画について意見交換が行われ、筆者はオブザーバーとして参加しました。
 またLSNのセクレタリーが所属するゲーテインスティテュートとタイ図書館協会の共催により「図書館のための国際セミナー」が開催され、バンコクにある大学図書館と公共図書館、および2つの刑務所図書館を訪問するツアーがありました。以下報告をいたします。


図書館のための国際セミナー

 3月19日にバンコクのゲーテインスティテュートで開催されましたが、プログラムは2部に分かれて、第一部は、図書館のアクセシビリティについて、第二部は、刑務所図書館についてでした。
 最初にタイの図書館協会の会長から、タイの図書館の歴史と活動についての紹介がありました。
 筆者もプレゼンを行いました。これまで関わってきた、障害者を含めたすべての人のために図書館をアクセシブルにするガイドラインについてと、その中でも情報アクセシビリティとそのためのツールとしてDAISY/EPUBの説明をしました。また、LSN(Library Services to People with Special Needs)の名称について、スペシャルニーズという言葉が時代に即さない、現状にあっていないという意見もあり、「IFLA Section for Accessible and Inclusive Library Services」への変更の動きがあることについても話しました。


写真1:ゲーテインスティテュートのSamira Zahra氏(左)と筆者(右)

 次に国立図書館の館長であるNawarat Panyangam氏から国立図書館の平等でインクルーシブな資料提供サービスについてプレゼンがありました。
 次にマレーシア大学のMohd Faizal Hamzah 氏によるプレゼンは「図書館づくりのサステナビリティ:インクルーシブな環境を生み出す」というテーマで話されました。
 またフィリピ―ンの国立図書館のDolores Carungu氏は、フィリピ―ンの公共図書館に焦点を当てたアクセシブルで、インクルーシブなサービスについて報告を行いました。
 第一部の最後には、国連アジア太平洋社会委員会(ESCAP)社会課題担当官である秋山愛子氏から、国連の障害インクルーシブ戦略の取り組みについての紹介がありました。

 第二部は、刑務所図書館のIFLAガイドライン(4th edition )が2023年2月に出版されたこともあり、編集者であるJane Garne氏とKrolak Lisa氏によるガイドラインのプレゼンがありました。上記ガイドラインは、以下から自由にダウンロードができます。
https://www.ifla.org/news/new-ifla-guidelines-for-library-services-for-prisoners/

 

写真2: ガイドラインの表紙

 Lisa氏は、プレゼンの中で、「刑務所図書館は、教育、生涯学習、情報へのアクセス、資料を借りること、レクリエーション、文化的な活動、精神的な発達を支援する安全で、フレンドリーな社交的な会合及び学習の場となる。」と述べました。Lisa氏は、所属するユネスコから「Books Beyond Bars: The transformative Potential」というタイトルで刑務所図書館についての出版を行っています。以下からコンテンツをダウンロードできます。
https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000369835


写真3:Lisa氏のプレゼンの様子


 また、ドイツの刑務所図書館機関のGerhard Peschers 氏は、プレゼンで、刑務所図書館の設置と発展のための活動を行っていることを強調しました。そのためには、上記ガイドラインが様々な言語で翻訳されることを望んでいます。

写真4:ドイツのミュンスターにある刑務所図書館


 タイの刑務所図書館について「人生を変える図書館」というテーマでタイの法務省法務局のNathhee Chitsawang氏とバンコクのArcharee Srisunakhua氏による女性刑務所所長による、刑務所図書館の昔と今を比較しながらのプレゼンがありました。「たった一冊の本が人生を変える」という信念のもとに、図書館が作られたそうです。


写真5:Chitsawang氏のプレゼンの様子


刑務所図書館の訪問

 国際セミナーの中でも紹介されたバンコクの女性刑務所図書館に行き、プレゼンで紹介された図書館、そして刑務所の施設の中も見学しました。以前に、DAISY for All Projectの中で、受刑者がDAISY製作のトレーニングを受けており、その時にトレーニングを受けた方たちが、今も継続して製作を行って、完成したものは、タイの視覚障害者団体に送っているとのことでした。
 また、Nakhon Pathom セントラル刑務所図書館も訪問しました。上述の刑務所図書館もそうですが、タイの王室の経済的な支援を受けて、この図書館の運営が行われていました。

写真6:タイのシリントーン王女の写真の前で

 残念ながら日本は、刑務所図書館はありませんのでとても参考になりました。

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