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先住民族の津波伝承交流ネットワークの構築


トヨタ財団 2007(平成19)年度 アジア隣人ネットワーク

企画概要

書記文字のない言語文化を持つ先住民族の知識は地域に根ざした独自の価値を有するにもかかわらず、情報のメインストリームから疎外されて、正当な評価がされないまま失われつつある。自然と密着して生活してきた先住民族の災害に関する伝承には貴重な知識が含まれており、特に津波に関する古くから伝わる情報が重要である。日タイ両国の先住民族の伝承の中に津波防災に関わる知識を探り、障害者のために開発されたマルチメディア技術を応用して、先住民族自身の言語に多言語の翻訳キャプションを加えて記録し、交流して、国際的な津波防災文化の構築に先住民族が積極的に参加するための萌芽ネットワークを形成する。

このようにして、先住民族の伝承を次の世代に伝え、その豊かな知恵と文化を世界中で正当に評価するために、喫緊の課題である自然災害に関わる各地の伝承を掘り起こし、必要なときに即座に必要な部分を参照できるDAISY(Digital Accessible Information System)形式のマルチメディアで記録し、先住民族の人々自身が主体のグローバルなネットワークへの展開をはかる。

ネットワークの内容と構築の方法

ネットワークの主体は、先住民族自身である。応募者らは伝承を継承している世代にインタビューを行い、ありのままの言葉で記録を残す。

書記文字のない文化を持つ先住民族の中で、津波防災に関わる伝承のある、タイのモーケン民族と日本のアイヌ民族へのインタビューを行う。インタビューには応募者とこれまで「マルチメディアによるわかりやすい知識表現」の共同研究を行ってきた、米国人の自閉症研究者も参加する。

書記文字のない文化を、先住民族自身の言葉で記録し共有するための技術としては、応募者らがこれまで開発・普及に関わってきたマルチメディアの国際標準規格であるDAISYを活用する。この開かれた標準規格の採用により、コレクションを永続的に発展させることができると共に、国境を越えて図書館のネットワークを通じて交換することが期待できる。

想定される成果

先住民族の伝承に含まれる知識を先住民族自身の言葉で記録し共有するネットワークの構築を通じて、先住民族の文化を正当に評価する機会を作り、それが失われつつあることの問題を明らかにすると共に、書記文字のない言語文化の記録・保存のための具体的な方法を提案する。

記録を世界中で安定して共有できる形で発信することで、知識の主体であることを否定されがちな先住民族の言語文化への正しい理解を促進する。また、障害者・高齢者等の社会的なマイノリティーを含むすべての人々に配慮された情報発信の形態の開発と普及を促進する。

伝承を知る世代へのインタビューにおいては、オリジナル音声等の録音と参考画像の撮影を行い、DAISY形式のマルチメディアとして編集する。音楽と画像による文化的背景の記録も合わせて行うことにより、言語以外の文化表現も含めた記録とする。

言語による情報は、英語および日本語のキャプションを付加し、CDによる配布やインターネットからダウンロードできる形のサンプルを無償で提供して、普段触れることの少ない先住民族の豊かな文化の紹介の機会となる。

記録のフォーマットとして採用するマルチメディアDAISYは、書記文字のない文化の記録に適しているだけでなく、一般的な印刷された図書を読むことに困難のある人にとっても多様な形態での知識へのアクセスを可能とするものである。記録をDAISYフォーマットで共有することで、ディスレクシア(読みに困難のある学習障害)、知的障害、自閉症、失語症、子どもの頃からのろう者、非識字者、高齢者、移住者及び学童等の、印刷された図書を読むことに困難のある人々への認識を高めると共に、より多様な情報のあり方を提案する機会となる。

障害者・高齢者・社会的なマイノリティーは、地域の防災ネットワークからはずれることが多く、特に情報支援の面では、事前の知識が災害時に自ら判断し避難ができるかどうかを左右する重要な要素であるが、適切な方法での情報提供はされていない。地域に根ざした先住民族の知恵のなかで、特に津波防災の観点から重要と思われるものを、障害者・高齢者・社会的マイノリティーを含む地域住民で共有できる形で発信することで、地域全体の防災力の向上に役立つ。

今後の展望

今回構築される萌芽ネットワークをベースに、今後他の先住民族を含めたネットワークの展開が期待される。

これまでの経験から、書記文字のない文化を持つ先住民族の中で、津波防災に関わる情報を軸にしたネットワーキングが想定できる民族として、アイヌ民族とモーケン民族をネットワーキングの候補としたが、将来的には、他の先住民族ともネットワークを広げていきたいと考える。

また、2年間のプロジェクトでは取材と情報の編集を行うが、将来的には、現地の人たち自身で、記録と編集を行うことを想定して、再生・製作技術の移転も行いたいと考える。

DAISY規格で製作されたものは、編集が容易にできるという利点がある。一度製作したものでも、さらにインタビューを行い、情報を増やしたり、後で変更したりできる。今回先住民族自身の言葉に英語と日本語のキャプションを付加することを考えるが、さらにタイ語等への翻訳作業をして、キャプションの選択肢を増やせば、知識を共有できる人が増える。

プロジェクトを通して得られた、DAISY規格に反映すべき要素は収集・報告し、規格の開発に役立てる。 将来的には、これまで応募者らが築いてきた、障害者に関わる国際ネットワークとも相互に連携し、社会的に疎外されてきた人々の持つ価値ある知識の共有という観点からの新たな交流に展開していきたいと考える。

事業報告

べてるとアイヌ民族をつなぐ会

浦河

中間報告書(MSWORDファイル)

報告書(MSWORDファイル)


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