年月 | できごと(備考) |
1996年5月 | DAISYコンソーシアム設立 |
1999年 | Open eBook Publication Structure(OEB)の開発 |
2001年1月 | DAISY仕様2.02の公式推薦が発表 |
2001年12月 | DAISYの正式名称Digital Audio-based Information systemからDigital Accessible Information Systemに変更 |
2003年3月 | 日本DAISYコンソーシアムを結成 |
2007年 | IDPFによりOEB の後継フォーマットとしてEPUB2の標準化 |
2010年5月 | DAISYコンソーシアムとIDPFによりWorking Group設置 EPUB3の開発が正式に開始 |
2011年10月 | DAISYのアクセシビリティを継承し、新たに日本語等の多言語に対応したEPUB3規格がリリース IDPFがEPUB 3.0の仕様を承認 |
2017年 | W3CとIDPFが合併。以降、EPUB3の規格の開発と維持は、W3Cが行う |
2021年2月 | EPUB accessibility 1.0がISO/IEC 23761として、公開 |
2022年8月 | EPUB accessibility 1.0がJIS X 23761として、公開 |
注釈
*W3C:World Wide Web Consortium / World Wide Webを機能させるための重要な部分を定義し、標準化します
*IDPF:International Digital Publishing Forum/ 国際電子出版フォーラム
*アクセシビリティ:様々な困難を抱える人たちが容易に使用できること
*アクセシブル:形容動詞で、アクセシビリティの状況のこと
*ボーンアクセシブル:紙の本などが世に出回るのと、同時に世に出るアクセシブルなもの
参考リンク:
idpf - Older Versions of EPUB(英語)
DAISY(デイジー)とは、Digital Accessible Information System の略で、国際標準規格で作られた、誰もが読めるアクセシブルな電子図書です。日本では「アクセシブルな情報システム」と訳されています。
世界中の、視覚障害者のほか、手などの障害でページがめくれない人、発達障害等で印刷された文字情報を読むことが難しい人も読書が楽しめます。
再生システムの一般的な機能については、「DAISY/EPUB再生システムについて」に書いております。
「DAISY/EPUB再生システムについて」で、説明した機能を兼ね備えており、音声は肉声(人の声)が録音された図書です。
見出しやページのみテキストが入っています。
「DAISY/EPUB再生システムについて」で、説明した機能を兼ね備えており、再生ツールに内蔵されている合成音声で読み上げます。
本文の内容が見られます。
「DAISY/EPUB再生システムについて」で、説明した機能を兼ね備えており、音声は図書に内蔵されています。
音声を聞きながら、ハイライトされた文字や画像を読むことができます。
「DAISYと私 マイ・リン・ホルトの場合」より
EPUB3は、誰でも無償で使える電子出版の国際標準規格(オープンスタンダード)です。iPadのApple Books、Adobe Digital Editions、Vitalsource Bookshelf、その他多くの電子書籍ビューアがEPUB3に対応しています。本を持ち歩かなくてもネットに接続すればどこにいても読めるクラウド上の自分の書庫に文献を置くこともできます。
このように、DAISYコンソーシアムとIDPFの連携を引き継ぎ、W3Cによるメインストリームの電子出版でのアクセシビリティが保証されています。
1)全てのテキストが、読むべき順番で入っている
テキストが画像になっていると、読み上げソフトが認識できないので、アクセシブルなEPUB3は、テキストデータがすべて入っていて、また、論理的な読み順になっている必要があります。
2)文書構造を意識したHTML5のマークアップ
見出しの階層によるマークアップをします。(例:h1, h2…)
紙の本をデジタル化する場合は、ページ番号のマークアップもします。(例:<span xml:id=”page361″ epub:type=”pagebreak”>361</span>)
脚注や参照、表等も、HTML5の規格に沿ってマークアップをします。
文書構造を意識したマークアップを、読み上げソフト等の支援機器が認識し、読者は、見出しやページ移動等、文書構造を活用しながら図書内をナビゲーションできます。
3)内容とスタイルは分離する
視覚による読書は1つの方法にすぎません。音声や点字等で読書をする人もいます。文字の色やフォントサイズ、表示位置などの視覚表現のみによる意味や重要度の表現は避けるようにします。レイアウトのためにtableタグを使ったり、文字を表現するために画像を使ったりしないようにします。内容は、スタイルがあってもなくても伝わるようにする必要があります。
4)表や文字は画像にしない
画像は視覚障害者にはアクセスできません。表や文字は画像にせず、適切なマークアップをします(例:表にはtableタグを使用)。どうしても画像を使う必要がある場合は、テキストによる解説を付加します。
5)画像の解説や代替テキスト
飾りのためだけにある画像や、本文内に解説のある画像以外は、全ての画像に、解説、キャプション、または代替テキストを付けるようにします。
6)数式にはMathMLを使う
数式にMathMLを使うことにより、対応した読み上げソフト等の支援機器で認識して読者が数式として読み上げられます。また、Tobi等の対応した製作ソフトで録音することもできます。
以上の要点は全て、EPUB3規格に準拠して製作することでカバーできます。
アクセシブルなEPUB3を製作できるツールに関しては、「製作システム」に記載しています。
参考サイト:
DIAGRAM CENTER 「Top Tips for Creating Accessible EPUB 3 Files」(英語)
DAISYコンソーシアム「Leveraging InDesign for Accessible EPUB Creation (W)」(英語)
Accessible Publishing Knowledge Base (英語)
DAISYの開発が始まったスウェーデンやアメリカ等では、ディスレクシア、ADHD、自閉症、視覚障害、肢体不自由等様々な理由により読みに困難のある学生にはDAISYでの教科書、教材の提供が保障されています。国内でも、DAISY図書の活用により、授業の内容が分かるようになった、本を読む意欲がわいてきた、自信を取り戻した、など様々な声が寄せられています。
印刷物を読むことに困難があり、適切な支援が受けられない場合、情報や知識へのアクセスが制限され、学習や仕事が困難になったり、自尊意識が低下したりするなどの問題につながります。
現在、日本障害者リハビリテーション協会を中心に全国のDAISY製作団体が協力し、DAISY教科書・製作・提供におけるネットワークを形成しています。 ATDOも参加し、各団体に要望のあった教科書を手分けして、順次DAISY化しています。DAISY教科書のサンプルのダウンロード、提供申請方法は、下記サイトをご覧ください。
マルチメディアDAISY版教科書 <日本障害者リハビリテーション協会>
日本ライトハウス情報文化センターでも、DAISY教科書の製作、提供がされています。
マルチメディアデイジー図書・教科書の製作・提供 <日本ライトハウス情報文化センター>
発達性読み書き障害児・者の文章理解向上に関するDAISYの有効性については、奥村智人氏の論文「発達性読み書き障害への障害特性に応じた読み支援法の開発」(博報財団助成・優秀賞受賞)が参考になるかと思います。