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ロッテルダムでのIFLA WLIC 2023(2023年8月21日~25日)参加報告

2023-09-20 16:54:56  国際

レポート

ヤスミン・ヨーセフ

サテライト会議

IFLAプリントディスアビリティのある人々のための図書館分科会(LPD)は、オランダ・ロッテルダムで開催されるIFLA世界図書館情報会議(WLIC)2023の事前会議(Satellite Conference)を企画し、公共図書館が本当にすべての人のためのものであることを確実にするために、これまでに達成された進歩を探求し、共有し、検証することを目的として、世界の図書館分野から専門家、実務者、支持者(advocate)を集めました。

サテライト会議では、主に3つのテーマに焦点が当てられました。最初のテーマは、コラボレーションで、各国の専門図書館(点字図書館など)が、公共図書館を含む他のステークホルダーとどのように提携し、利用者にサービスを提供しているかを紹介しました。 

2つ目のテーマは、図書館サービスを誰もが利用しやすいものにする方法について、実行可能なステップとベストプラクティスを提供することに焦点を当てました。世界各地からの様々な好事例が紹介され、インクルーシブな図書館になるために一歩前進している国立図書館、学術図書館、その他のタイプの図書館からの有望な取り組みが見られました。

3つ目のテーマでは、アクセシブル・コンテンツの発見可能性に関する疑問を提起し、その答えを探します。 

 

[画像1: サテライト会議 第一セッションの基調講演者を紹介する著者。]


LPDパネルディスカッション

LPD部会はまた、WLIC2023の一環としてパネルディスカッションを開催しました。パネルディスカッションでは、プリントディスアビリティのある人に対するインクルーシブな図書館サービスの提供について、利用者、専門図書館、公共図書館、製作者、法的視点など、さまざまな観点から議論が行われました。 パネルディスカッションは、DAISYコンソーシアム会長のマールテン・ヴェルブーン氏の力強い紹介から始まりました。彼は、プリントディスアビリティのある人のための図書館サービスの将来について語りました。彼のスピーチの結論は、未来に備えるために、専門図書館と公共図書館は協力してインクルーシブな図書館サービスを主流にしなければならないということです。また、主流の市場でアクセシブルな書籍が入手できるようになった今、これらのアクセシブルな図書館が、プリントディスアビリティのある者が容易にアクセスできるような形で図書館のコレクションに加わるにはどうすればよいのか 。そして最後に、図書館のインクルーシブ性とアクセシビリティを確保するためには、LPD図書館が依然として不可欠であると結論づけています。 

ディスカッションの中で、インクルーシブなサービスを実現するためにスピーカーが繰り返し述べたのがパートナーシップでした。公共図書館、学校、その他の主要なステークホルダーとパートナーシップを結び、利用者に働きかけ、エンドユーザーと協力し、彼らのニーズを中心にサービスを構築すること、公共図書館は、アクセシブルなメディアを提供する責任を負う専門図書館と協力すべきであるとしました。緊密な協力関係を築くことができれば、それは画期的なことです。 

法に関する国際的な観点からは、国内法だけでなく、国際的な著作権の枠組みを熟知し、それを活用することが重要です。これは人権的な要素もあり、軽視できないことが明らかです。大きな責任です。図書館は、プリントディスアビリティのある人のアクセスを可能にするこれらの法律を擁護する必要があります。私たちはそれらを擁護する必要があり、私たちの役割はアクセスとアクセシビリティのためにあります。 

また、製作機関は出版社と協力し、知識を伝達し、ボーンアクセシブルな出版物を製作できるよう支援する必要があります。しかし、アクセシブルな出版物の製作はまだ続くでしょう。デジタルソースを持たない出版物の大部分は、アクセシブルでないままだからです。コミックのような画像の多い書籍もあります。 

もうひとつ指摘されたのは、利用者のニーズに配慮することの重要性です。例えば、高齢者は若者とは異なるニーズを持っています。ディスレクシアのためのトーキングブックなど、様々なフォーマットを提供することで、読書が苦手な若者も読書を楽しみ、図書館を利用するようになるでしょう。理想を言えば、本がボーンアクセシブルになれば、ディスレクシアのような異なる読書ニーズを持つ若者も、主流の本に簡単にアクセスできるようになるでしょう。 

 

[画像2: LPDパネルディスカッションの登壇者たち。]


LPDビジネスミーティング

LPDセクションはWLIC期間中、初のビジネスミーティングを開催しました。会議の議題には、年次報告書の見直し、サテライト会議の報告、セクションの使命と目標に関する議論などが含まれました。 

 

[画像3: LPDセクションの新旧メンバーの集合写真。]


ポスターセッション

WLIC2023のポスターセッションでは、クロアチア盲人図書館のJelena Lesaja氏とKarolina Zlatar Radigović氏(LPDセクションの前任および次期メンバー)が、2018年から実施している同図書館のポッドキャストについて発表しました。このポッドキャストでは、本のナレーションを担当する著者や、アクセシビリティの分野で活躍する専門家が出演しています。  彼らのポスターはIFLA WLIC 2023で視覚的インパクト賞を受賞しました。 

 

[画像4: 最優秀ビジュアル・インパクト・ポスター賞を受賞したジェレーナとカロリナ。]


LSNセッション

特別なニーズのある人々に対する図書館サービス分科会(LSN)は、"How can we make libraries accessible and welcoming for everyone "と題したオープンセッションを開催しました。  このセッションでは、「誰もが利用しやすい図書館とサービスのためのIFLAガイドライン」など、セクションが取り組んでいるガイドラインのいくつかが紹介され、また、ろう者、盲ろう者、難聴者のためのサービスに関連する適切な用語の使用についての必要性、そして最後に、誰もが利用しやすく、インクルーシブであるための取り組みにおけるマルメ(スウェーデン)の公共図書館のアクセシビリティ・ガイドラインについてのプレゼンテーションが行われました。 

 

[画像5: 「障害とは何か」という問いが表示された大型スクリーンの前のステージにいるLSN分科会の登壇者たち。]

LSN分科会では、オープンセッションに加え、部会の名称変更について話し合い、新入のメンバーを歓迎しました。 


図書館ツアー

ハーグのPeace Palace図書館とオランダ国立図書館(KB)を訪れる図書館ツアーにも参加しました。 

Peace Palace図書館は国際法を専門としており、アラビア語を含む様々な言語で約100万タイトルの蔵書があります。主にハーグ国際法アカデミーの学生にサービスを提供していますが、世界中の学者や学生にもサービスを提供しています。同図書館の詳細はウェブサイト(https://peacepalacelibrary.nl/)でご覧ください。 

ハーグにあるオランダ国立図書館(KB)は、オランダで出版された、またはオランダに関するタイトルを収集する使命を担っています。KB図書館への登録は無料です。現在、コレクションのデジタル化に取り組んでおり、出版社から印刷版が提供されない限り、タイトルのデジタルコピーのみを収集することができます。また、公共図書館のネットワークと協力し、すべての人に情報や教育サービスを提供しています。オンラインでリサーチサービスを提供しており、2021年のオンラインサービスへの訪問者数は400万人を超えました。( https://www.kb.nl/en

プリントディスアビリティのある人に関しては、KBはPassend Lezzen(プリントディスアビリティのある人のための主要図書館サービス)およびDedicon(アクセシブルタイトルの製作者)と協力し、アクセシブルなサービスを提供しています。 

 

[画像6: 国立図書館(KB)の閲覧エリアの書架。]

また、ロッテルダムにある別の公共図書館を訪れ、身体不自由のある利用者にも利用しやすい棚や、音声読み上げ、高コントラスト、ズームなどのアクセシビリティ機能を備えたオンライン・カタログなど、アクセシビリティに配慮した対策を見学しました。 

 

[画像7: ロッテルダム図書館の高コントラストでアクセシブルなオンライン・カタログ。]

 

[画像8: ロッテルダム図書館の利用しやすい書架。]

結論として、ロッテルダムで開催されたWLIC2023は、インクルーシブな図書館サービスの将来についての議論、意見交換、洞察に満ちたものとなりました。図書館コミュニティにおける包摂(inclusivity)とアクセシビリティの推進におけるLPD図書館の役割を再確認しました。


(翻訳M.N,K.K)


[参考リンク(外部サイト)]

WLIC 2023 ( https://2023.ifla.org/ )

IFLA ( https://www.ifla.org/ )

IFLA LPD section( https://www.ifla.org/units/lpd/ )

IFLA LSN section( https://www.ifla.org/units/lsn/ )

Peace Palace図書館( https://peacepalacelibrary.nl/ )

オランダ国立図書館(KB)( https://www.kb.nl/en )



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