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浦河町べてる祭り参加報告(2023年10月13日~14日)

2023-11-14 11:44:30  その他

 北海道浦河郡浦河町の「べてるの家」(https://urakawa-bethel.sakura.ne.jp/)では、精神障害等を抱える当事者が地域活動に取り組みながら生活しています。ATDOは、精神障害に伴う様々な情報支援ニーズを特定し支援技術に反映させることを目的に、DAISY利用や避難訓練などの取り組みで浦河べてるの家と協働しています。
 今回4年ぶりに浦河での対面開催となったべてるの家の「当事者研究全国交流集会」「べてるまつり」に参加しました。イベント前後の見学の様子も含めて、レポートします。

「べてるの家」朝ミーティングへの参加(10月13日)

 浦河べてるの家で毎朝行われているという、8時半からの「朝ミーティング」に同席させてもらいました。このミーティングにはべてるの家で生活する障害等当事者(以降、メンバー)と、支援職員(以降、スタッフ)が全員参加します。「名前、今日の体調、今日の目標」を一人ずつマイクで発表し、最後にスタッフから今日の連絡事項がありました。
 べてるまつりのために研修・手伝いで来ている学生や私も含めて、すべての参加者がマイク発表をしました。べてるの家のメンバーとスタッフが垣根なくコミュニケーションしている様子、メンバー同士でもお互いに助け合っている様子などを見ることができました。

第20回当事者研究全国交流集会北海道・浦河大会(10月13日)

 「当事者研究」という支援技法が、障害当事者についてはもちろんのこと、障害当事者以外にも困りごとがある人にとって、とても有意義なものであることが感じられました。色々な人の研究発表を見ることができ、このような捉え方があるのか、と参考になりました。困りごとをユーモラスに客観視している研究は、とても面白かったです。子どもが当事者研究をしているものもありました。
 午後の分科会では、自由に6部屋に分かれて、各部屋内で、講師のもと、出席者全員が当事者研究に参加しました。
 日頃お世話になっているべてる理事の方がファシリテーターに入っておられるという理由で私が参加した分科会のテーマは「楽しい老後と終活 ―お~い老い―」でした。お話上手な講師の方(べてるの家メンバー)、ゲストの早坂潔さん(べてるの家メンバー:副理事長)、向谷地生良さんの3名の老いについての思いを聞いた後、参加者それぞれが目指す老後について、4人1組のグループで雑談し、グループごとに発表しました。ファシリテーターが、発表内容をホワイトボードに書き出してまとめていきました。ホワイトボードも参考にしながら、発表内容についての感想や意見を募る中で、さらに共感を呼ぶ感想や、思いもよらない価値観(「嫌われる老人になりたい」)がでてきました。講師の方の老後の心配事(周りに嫌われないで老後を過ごしたい)を打ち消してしまいそうな(嫌われる老人でいい)というアイデアを、ファシリテーターはイラストで「困難に立ち向かう姿勢ではなく、柳のように受け流す」と分かりやすく表現してくれました。
 私自身はまだ老いに関心がなく、当初は場違いなテーマに参加してしまったと思っていましたが、最後はとても楽しく前向きな気持ちになりました。

第31回べてるまつり in 浦河 (10月14日)

『メイン講演 映画「北の流氷(仮)」への思い ゲスト田中光敏監督』

 浦河町出身の田中光敏監督が、砂漠化した襟裳岬の山と海を植林で取り戻した人々の実話を、映画化するそうです。北海道4町(襟裳、様似、広尾、浦河)が管掌を超えて共同して映画に協力し7年間の準備期間を経て、来年クランクイン予定とのことでした。会場からの質疑応答の中で田中監督からは次のようなお話がありました。「募金やエキストラ出演など、地元の人々の協力をお願いしたいです。浦河べてるの家のメンバーの方々にも是非にエキストラなどご協力いただきたいと思っています。人と自然の共生がテーマの映画です。自分たちの町を自分たちの手で守る人々の話でもあり、日本だけではなく世界でも普遍的なテーマであると思います。主演は皆さん全員が絶対に知っている俳優となる予定なので楽しみにしていてください。」

『地域の魅力、再発見 〜それぞれの取り組み〜』

 いちご農家のみなさん、飲食店、フレンド幼稚園など地域の事業者の協力を得ながらべてるの家の皆が頑張っているとのことで、地域活動の紹介がありました。

 午後は、べてるの家メンバーの「劇団ぱぴぷぺぽ」による劇「ありがとう」からはじまり、べてる1年の報告、幻覚&妄想大会の表彰式を経て、閉会しました。メンバーひとりひとりの特性と個性、ネガティブな面も含めて温かくユーモアを持って認め合っている様子が「べてる」なのだなと感じました。


[写真:メンバーたちによる閉会の合唱の様子。]

浦河町ひがし町避難訓練 参加(10月15日)

 浦河町には、メンバーが居住する住居が点在しています。べてるまつりの翌日に、町内で一斉の避難訓練が行われるということで、ひがし町在住のメンバーが住居から避難場所に移動する際のサポート(同行)をしました。
 実際に屋外で防災無線のサイレンが鳴ってからの避難行動開始となります。サイレンが鳴った後に住居から出てこないメンバーがおり、スタッフが迎えに行きました。屋内で食洗器を使用していたためにサイレンの音が分かりにくかったそうで、避難行動開始のときの課題のひとつと思われます。
 防災訓練自体には、町や消防署の方々の想定(20-30人)を超える、100名近い町民の方々が参加されていました。町民の防災意識の高さを伺えました。

最後に

 浦河にスタッフとして出向しているATDO職員と一緒にイベントの休憩時間等を過ごしましたが、両日とも、イベント中も合間の休憩時間中も、スタッフからメンバーの方に積極的に声掛けをされていて、温かい雰囲気を感じることができました。イベント期間中に周りの方とお話する機会も多々ありましたが、後からのスタッフの説明でメンバーであることが分かるなど、見た目では精神障害の有無が分からない方がほとんどでした。精神障害を持っている方々と身近に過ごせたのは新鮮な経験でした。
 個人的な感想になりますが、べてるまつりを通して、いままでは知らなかった精神障害の方々の苦労を知ることができました。彼ら/彼女らは大変な苦労を抱えている普通の人なのだということが分かり、また、苦労とともに人生を重ねてきているすごい方たちだとも思いました。私自身が何となく持っていた、精神障害の方は近寄りづらいという印象が、今回の出張でなくなったと思います。このような交流の機会がもっといろいろな人にあるとよいと感じました。

以上
報告者:K.K

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