発達障害のある人の病院の受診や情報アクセスに関する困難とニーズ
2026-03-03 17:13:17 DAISY/EPUB情報 その他
国立がん研究センターの八巻氏が実施している、障害のある人が適切ながん医療を受けられるようにするための研究事業で、ATDOは分担研究をしています。今年度は、がんセンターで作成されたわかりやすい版冊子「子宮頸がん」と「がん検診」から、テキストや画像と音声を同期したマルチメディアDAISY版を製作しました。また、発達障害の方へのインタビューを行い、わかりやすい版やDAISY版へのフィードバックの収集と、情報取得や医療受診時の困難やニーズについて事例をまとめました。インタビューの結果と要点を掲載します。
① 発達障害者の困難
インタビューは、読字障害者(ディスレクシア)2名と高機能自閉症者1名を対象に実施し、情報取得や医療受診に関する困難の事例としては次のようなものが挙げられました。
<主に読字障害>
㋐漢字が読めない
・病院で渡される資料が読めない(冊子や、受診に関する指示など)
・問診票が読めない
・標識が読めず、受付等どこに行けばよいか分からない
㋑書字の困難
・問診票の記入が困難
・聞いたことを他の人(家族など)に伝えられない(メモが困難。誤字脱字が多い)
<主に高機能自閉症>
㋒普段は読めるが、コンディションの悪い時(疲労時やストレスのある時など)は読めなくなる。
・文字がにじんだりして見にくくなる
・文字が意味のあるものに見えなくなる、知らない外国語の文字を見ているみたいになる。
㋓感覚過敏(健常者のちょっとした不快感が強烈な苦痛として感じられる)
・複数の音が混じると耐えられず歯科受診できない(聴覚)
・目薬ができない(触覚や視覚)
・粉薬が飲めない(触覚)
・痛みや違和感のある検診・治療が困難(触覚)
㋔協調運動障害
・薬の吸入ができない(息を吸ったり吐いたりする動作が指示通りできない)
<発達障害全般>
㋕全体の中の要点が分からなくなる
・話を聞いたり資料を読む際、要点が分からなくなる。
・診察時に先生に症状等を上手く伝えられない。(話し過ぎてしまう。先生から、どこが痛いか。いつから痛いか。一つずつ質問してくれれば回答はできる。)
㋖慣れていない専門用語が分からない
・診察時の先生の話が難しい表現の言葉が多く、理解が難しい場合がある
・通常版冊子の用語は難しいと感じる。わかりやすい版の用語は分かりやすい。
㋗先の見通しを立てるのが苦手
・数か月先の検診の予約を自分で取るのが困難。
・現状で問題がないため、将来のために検診を受けるという気持ちを持てない。
・受診時に何を準備したらよいか分からない。
㋘先生の話を聞いたときは理解できても、帰宅後に忘れてしまう
・再診やセカンドオピニオン等の際に、前回の受診内容を伝えられない。
<その他>
㋙環境要因
・勤務しているB型作業所で定期健康診断がなく、費用の自己負担が難しい。
② わかりやすい版冊子のマルチメディアDAISY版
発達障害者の情報取得の困難としては、「漢字が読めない」「医療用語が難しい」「内容が多いと要点が分からなくなる」といった事例が挙げられました。わかりやすい版には全部の漢字にフリガナがありますが、フリガナがあると読めるという意見の一方で、文字が多すぎると見にくくなる、平仮名だけだと内容を理解するのが難しいといった意見もありました。
わかりやすい版とDAISY版については、両方使いたい、分かりやすい、といった意見があり、「やさしい日本語」が使われ、内容量が絞られている「わかりやすい版」と、音声読み上げのあるDAISY版の両方が、発達障害者の情報取得の困難を軽減して、内容理解の助けになることが示唆されました。
(画像:左から、通常版冊子、わかりやすい版冊子、DAISY版)

<わかりやすい版冊子>
通常版のがん冊子の内容が、知的障害のある方をはじめ、だれにでもわかりやすい、やさしい日本語になったものが「わかりやすい版」です。
やさしい日本語が使われ、漢字にはフリガナがふられています。
書かれていることがイラストで示されています。
1ページの文字数は少なく、文字サイズは大きいです。
通常版はB5サイズで32ページなのに対して、わかりやすい版はA4で16ページです。。
<マルチメディアDAISY版>
わかりやすい版冊子の内容に、読み上げ音声を同期した、テキスト・画像・音声のあるデジタル図書です。次のような機能が読みに困難のある人の支援になります。
音声読み上げにより、内容理解の助けになる。
ハイライトがありどこを読んでいるのかわかる。
文字サイズの拡大や、背景色や文字色の変更ができ。
再生速度を変更できる。
③ 医療受診時の困難
医療受診時の困難としては、「感覚過敏」「協調運動障害」「聞いたことを忘れてしまう」「先の見通しを立てるのが苦手」「要点をまとめて話すのが苦手」といった事例が挙げられ、これらの困難から医療受診しにくくなっている場合があることが示唆されました。それぞれの課題について、対応策を明らかにしていくことで、発達障害者の情報取得や医療受診の現状を改善していけると考えらます。
国立がん研究センターがん対策研究所の「がん罹患前より障害があるがん患者に対する医療機関における適切な医療・支援の実装に資する研究」事業で製作された、わかりやすい版やマルチメディアデイジー版は、次のウェブサイトで公開されています。
https://plaza.umin.ac.jp/~CanRes/match/match-achievement/#mokuji03
M.M.